「名もなき家事」に名前をつけてみたら見えてきたこと

その名前のない疲れ、わかります

夕食を作り終えて、洗い物も済ませて、やっと座れると思った瞬間。ふと視界に入る、乾いた食器を戻していない食洗機。読み終わった郵便物の山。子どものプリントに書くべきサイン。「あれ、まだ何かやることあったっけ」という感覚に、心当たりがある方は多いのではないでしょうか。

これらの一つひとつは、たいした作業ではありません。数分あれば終わることばかりです。でも、名前がないから「家事をした」とカウントされず、頭の片隅で常にチラつき続ける。この感覚こそが「名もなき家事」と呼ばれるものです。献立を考える、冷蔵庫の中身を把握する、足りない調味料を買い足す、子どもの持ち物を確認する。挙げていけばきりがありません。

名前がないから、軽くみられる

あるコピーライターの方が、こうした名もなき家事に70種類もの名前をつけたという話があります。乾いた食器をしまう作業を「タッパー神経衰弱」、玄関から部屋までの動線を整える作業を「道づくり」と呼ぶなど、思わずクスッとしてしまうようなネーミングです。

この取り組みが面白いのは、単に「大変さを訴える」のではなく、「名前をつけることで初めて、その存在に気づいてもらえる」という視点です。名前のない仕事は、頭数にも入らず、感謝もされず、当然「誰かがやって当たり前」になりがちです。実際、共働き夫婦を対象にした調査でも、家事分担の割合について夫婦間で15%以上の認識のズレがあることが分かっています。「自分は7割やっている」と思っている夫に対し、妻の側は「自分が9割やっている」と感じているケースが多いというデータもあります。このズレの正体の多くが、まさにこの「名もなき家事」の見えなさにあるのではないでしょうか。

見える化は、責める道具じゃなくていい

こう聞くと、「じゃあパートナーに全部リストにして突きつけよう」と思う方もいるかもしれません。ただ、それだと角が立ちやすいのも事実です。おすすめしたいのは、まず自分自身のために名前をつけてみることです。

たとえば、1週間のあいだに「あ、今この名もなき家事をやったな」と思った瞬間を、スマホのメモにひとことだけ書き留めてみる。「道づくり」でも「タッパー神経衰弱」でも、自分なりの呼び方でかまいません。1週間後にそれを眺めると、「こんなに細かいことをこなしていたのか」と、自分自身がまず気づかされます。

そのメモを、責めるためではなく「こんな見えない仕事があるんだよ」と共有するきっかけとして使うと、会話のトーンがずいぶん柔らかくなります。「手伝おうか」ではなく「これ、次からお願いできる?」と具体的にお願いしやすくなるのも利点です。名前がついた瞬間に、それは「なんとなくやっている作業」から「誰かが担っているタスク」に変わるからです。

完璧じゃなくていい、まず気づくことから

名もなき家事をすべてなくすことはできません。ただ、その存在に自分自身が気づき、名前をつけて言葉にするだけで、心の負担は少し軽くなります。そして、それを誰かと分かち合えたとき、「頑張っているのは自分だけじゃない」「ちゃんと見てくれている」という安心感が生まれます。

今日も名もなき家事をいくつもこなしたあなたに、まずは「お疲れさまでした」と伝えたいです。完璧を目指さなくて大丈夫。まずは一つ、今日の「名もなき家事」に、自分なりの名前をつけてみることから始めてみませんか。

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