「名もなき家事」が70個もあると知って、少し救われた話

洗濯機を回し終えて、ふと気づく。乾いた洗濯物をたたむ前に、まだ床に散らばった脱ぎっぱなしの服を拾い集めなければいけない。おしゃれ着用の洗剤が切れかけていることに気づき、買い物リストにこっそり書き足す。子どもの体操服にゼッケンを縫い付けたのはついこの間なのに、もう名前が薄れてきている気がして、また確認しないといけない——。

「今日は洗濯した」というひとことの裏側に、こんなに細かい作業が積み重なっていることを、家族はどれくらい知っているだろう。がんばっているのに、「家事、そんなにやってないよね」と言われたような気持ちになる日はないだろうか。それは気のせいでも、大げさでもない。ちゃんと理由がある。

「見えない家事」には、実は名前がついている

最近、コピーライターが「名もなき家事」を70種類も言葉にして可視化したという取り組みが話題になった。「タッパー神経衰弱」(サイズの合う容器とフタを探し出す作業)、「道づくり」(家族が通りやすいように床のものをどかす作業)など、思わず「それ、私もやってる」とつぶやきたくなるようなネーミングばかりだ。

料理、洗濯、掃除——家事というと、この3つの「本体」が思い浮かびやすい。でも実際には、その前後にびっしりと細かい作業がくっついている。献立を考える、在庫を把握する、洗剤を補充する、季節ものを入れ替える、子どもの持ち物を確認する。ひとつひとつは数分の作業でも、1日に何十回と発生し、しかもそのほとんどが「頭の中で段取りを組む」という見えない負担を伴っている。

ある調査では、6歳未満の子どもがいる共働き世帯で、妻の家事関連時間が1日6時間33分だったのに対し、夫は1時間54分だったという結果も出ている。この差は、単純に「作業量」だけの問題ではなく、「次に何が必要か」を常に考え続けている人と、頼まれたことだけをやる人との差でもあるように思う。

それでも、ひとりで抱え込まなくていい

こうした話をすると、「じゃあパートナーにもっと分担してもらおう」という結論になりがちだ。もちろんそれも大切なのだけれど、まず伝えたいのは、「見えない家事に疲れているのは、あなたの要領が悪いからじゃない」ということだ。名前がついていないから、頑張りが数えられない。数えられないから、努力そのものが「なかったこと」のように扱われてしまう。まずはその構造に気づくだけでも、心はずいぶん軽くなる。

そのうえで、実践できる工夫はいくつかある。ひとつは、「名もなき家事」に実際に名前をつけて、家族と共有してみること。「タッパー神経衰弱、今日は誰の担当?」と冗談交じりに言えるようになると、不思議と「見えなかった作業」が家族の会話に登場するようになる。見える化は、分担への一番の近道だ。

もうひとつは、「全部を頭の中で抱えない」仕組みを作ること。冷蔵庫にホワイトボードを貼る、家族共有のメモアプリを使う、買い足すものが減ったら気づいた人がすぐ書き込む——そんな小さな仕組みでも、「段取りを考える係」が自分ひとりだけにならずに済む。

そして、時短家電に頼ることに罪悪感を持たなくていい、ということも改めて伝えたい。ロボット掃除機や食洗機、乾燥機付き洗濯機を組み合わせるだけで、週に5〜10時間ほどの家事時間が浮くというデータもある。1年に換算すれば250時間以上だ。それは「手を抜いている」のではなく、「その分の時間を、自分や家族のために使えるようになった」ということだと思う。

がんばりは、ちゃんと積み重なっている

「タッパー神経衰弱」も「道づくり」も、名前がついたことで、初めて「ちゃんとやっていた家事」として認められた気がする。名もなき家事に押しつぶされそうな日は、どうか自分を責めないでほしい。それはあなたが不器用なのではなく、単に「数えられていなかった」だけなのだから。

今日も気づかないうちに、いくつもの「名もなき家事」をこなしているはずだ。それに気づいてあげられるのは、まず自分自身。小さな作業のひとつひとつに、「これも立派な家事だったんだ」と、そっと拍手を送ってみてほしい。

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